ブラームスはお好き [本]
あなたが恋愛をとり逃がしたことにたいして告訴します。
ポール、39歳。長年付き合った年上のロジェという恋人がいるが、浮気性の彼の自由さに孤独を感じていた。そんなとき出会った若く美しい青年シモン。ポールに夢中になるシモン。そんな彼に彼女もいつしか心を許すようになるが、二人には15という年の差があった・・・
フランソワーズ・サガンの『ブラームスはお好き』です。
9月も半ばを過ぎました。
遅ればせながら、私のブログでも「ブラームス解禁」です。
ともすれば、午後1時30分スタートのドラマになってしまいそうな内容なのですが、思い浮かぶのは洒落たフランス映画。舞台がパリというだけじゃなくて、サガンの心理描写、登場人物のセリフに雰囲気があるんですよね。
恋愛に年の差は関係ないと言うけれど・・・
もし、あなたがポールだったら?
長年付き合っている彼女がいる未婚の男性は、この本で微妙な女性心理を学んでおきましょう。
さて、ポールとシモンが音楽会で聴いたブラームスの“ちょっと悲壮な”コンチェルト。
作品の中では曲名までは書かれていないので、映画ではどうなんだろうと思って調べてみたら、『さよならをもう一度』という名で映画化されているんですね。
イングリッド・バーグマンはどんな横顔を見せてくれたのかな。
映画で使用されたのは協奏曲ではなくて、交響曲第3番の第3楽章。
どこか物憂げでロマンティックな旋律がぴったり・・・なのですが、ここは原作どおりコンチェルトを。
- アーティスト: パールマン(イツァーク), シカゴ交響楽団, ジュリーニ(カルロ・マリア), ブラームス
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2004/06/23
- メディア: CD
“ちょっと悲壮”といえなくもないヴァイオリン協奏曲第1楽章。
イツァーク・パールマンのヴァイオリン、カルロ・マリア・ジュリーニ シカゴ交響楽団の一枚です。
いかにもブラームスといった感じのシンフォニックな楽章ですが、時おり顔を覗かせる甘美な旋律はまるで花が開くよう。
パールマンは、まろやかで美しいヴァイオリンの音でブラームスの想いを歌い上げています。
どこまでも優しいブラームス。
ブラームス、私は好きです。
かもめ食堂 [映画]
映画 『かもめ食堂』です。
フィンランドにある、おにぎりがメイン・メニューの“かもめ食堂”。当初は客が全く入らなかったが、日本のマンガおたくというフィンランド青年が訪れたことがきっかけとなって、一人また一人と食堂に人が集まりだす ―
群ようこさん原作の大人のためのお伽噺。
小林聡美さん、片桐はいりさん、もたいまさこさんという顔ぶれからも想像できるどおりの世界。
フィンランドの美しい映像と映画の中に流れるゆったりとした時間に引き込まれてしまいます。
どれも絵葉書にしたくなるようなシーンばかり。
卵が割れる音、食器が触れ合う音、鮭が焼ける音・・・etc.すべてがぬくもりあるBGMです。
レストランじゃなくて食堂、カフェじゃなくて喫茶店。やってみたくなりますね。
まずは美味しい珈琲の淹れ方から。“おまじない”は・・・なんだったっけ(笑)。
時間に追われる毎日というアナタ、たまの休日くらい、おウチでゆっくりしてみてはいかが?
心も休まること請けあいです。
◎用意するアイテム :おにぎり(スタンダードなもの)
ザ・名言 [名言]
「いま一番、世界で一番近くにいるのが赤ちゃんと綾香やで」
(NHKスペシャル にっぽん家族の肖像 第4集「明日へのいのち」~12年目の震災孤児~)
「赤ちゃん捨てる?」
ソフィーの選択 [本]
ぼくは夢見る者特有の鋭く明晰な洞察力で彼女が破滅する運命にあることを知った。
Sophie's Choice (Vintage Classics)
- 作者: William Styron
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 2004/02/05
- メディア: ペーパーバック
1947年夏、南部出身で作家志望のスティンゴは、ブルックリンの安下宿で一組のカップルに出会う。アウシュヴィッツを生き残ったポーランド美女ソフィーと天才的で謎めいたユダヤ人ネイサン。深く愛し合う二人だったが、二人の愛にはただならぬものが漂っていた・・・
ウィリアム・スタイロンの『ソフィーの選択』です。
ピューリッツァー賞作家スタイロンによる哀しくも美しい恋愛小説。
ポーランド人とユダヤ人のカップル、南部出身者とアウシュヴィッツの生き残り・・・etc. ストーリー設定が実に巧み。
スタイロンの発想と筆力は驚異的で、その内容にただただ圧倒されるのみです。
ずしりと重いのは、その分量だけじゃないはず。
<あとがき>によると、この小説には興味深いエピソードが。
それは、執筆途中の小説に行き詰まって数週間もの間一行も書けなかったとき、スタイロンの夢の中に学生時代に知り合ったポーランド人女性が現れたというもの。目覚めたスタイロンは執筆途中だった小説を中断し、約5年の歳月を費やしてこの作品を書き上げました。
ちょっと出来すぎ?
でも、そういうのって信じた方が楽しいですよね。
映画化もされていて、メリル・ストリープがソフィー役を熱演して・・・いるらしいです。
まだ観てないのですが、きっと彼女にぴったりでしょう。
でも、映画という枠に収めることは難しいんじゃないかな。
この作品を読むとき、文字の持つ力に驚かされるに違いありません。
もちろん、あなた自身の持つ想像力にも。
ソフィーとネイサンにとって特別な意味を持つ曲 ―
J.S.バッハのカンタータ第147番よりコラール<主よ、人の望みの喜びよ>です。
藤森亮一のチェロ、カール=アンドレアス・コリーのピアノ。
ピアノの旋律が、天上へ続く階段のよう。
その響きは平和でもあり、哀しくもあり・・・
あなたの想像したラストシーンにかければ、きっと映画以上のものになることでしょう。
スキップ [本]
時の無法な足し算の代わりに、どれほど容赦のない引き算が行われたのか。
高校2年生の真理子は、目が覚めると見知らぬ部屋で寝ていた。そこに帰宅した様子の女子高生に今自分がどこにいるのか尋ねてみる。返ってきた答えは、「ふざけてるの? ―お母さん」
北村薫さんの『スキップ』です。
17 → → → 42
ある日突然、42歳の自分へ“スキップ”してしまった17歳の女子高生の物語。
失われた25年もの歳月。
レコードはCDに。テレビのガチャガチャはピコピコに。
そして、高校生だった女の子は、高校生の娘を持つ母親に ―
ファンタジーでもSFでもない、青春小説。
前向きで清潔な主人公の姿に胸を打たれます。
どおりで高校生活が生き生きと描かれているわけですね。
そして、最後に待っているのは・・・
ラストシーン、確かめる価値アリですよ。
言葉で平和を紡ぎたい [テレビ]
被爆者の平均年齢74歳。
日本人の平均寿命は80歳ほど。
残された時間は、そう多くない ―
女優の吉永小百合さん。
彼女がボランティアで20年以上続けている活動があります。
広島・長崎の原爆詩、そして沖縄の戦争童話の朗読活動です。(『吉永小百合 ・言葉で平和を紡ぎたい』 NHK)
平易な言葉で語られる戦争の悲惨さ。
言葉ひとつひとつを慈しむかのように語る吉永さんの姿は、吉永さんの平和を願う姿勢そのもの。
静かで、そして強い。
そんな吉永さんの朗読を聴いたかつての子どもたち。
その子どもたちが成長し、今度は自分自身が語り部となって次の世代へ平和の貴さを伝えてゆく ― そんなことが実現しているのです。
吉永さんが蒔いた平和への願いを込めた種。
その種が芽を出し、実をつけ、今また種を蒔こうとしている。
そんな現実を知って、冒頭の不安が少し軽くなった気がしました。
いつしか戦争体験者がいなくなる日が来たとしても、紡いでいく言葉の中で先人たちの思いは生き続ける。
そう、語り継ぐことを止めない限り。
言葉の持つ力を信じて。
夏の庭 [本]
「あれは絶対、オレたちへの宣戦布告だ」
人の死に興味を持った三人の少年。人の死ぬ瞬間を見るためにひとり暮らしのおじいさんを観察することに。しかし、おじいさんはなかなか死にそうにない・・・
湯本香樹実さんの『夏の庭 ―The Friends』です。
瑞々しい文章で綴られる少年たちとおじいさんの心の交流。
湯本香樹実版“スタンド・バイ・ミー”。
テレビの中の甲子園、早朝のラジオ体操、プール帰りのアイス、けっして終わらない宿題・・・
読んでいるうちに、ゆったりと時間が流れていたあの頃を思い出すことでしょう。
湯本さんは東京音楽大学の作曲科を卒業。
書いているとき、頭の中でどんなメロディが鳴っていたのかな。
この作品、10カ国以上で刊行され、たくさんの賞を受賞し、また映画にもなっています。
夏の読書感想文にピッタリの一冊。
もう大人になったから書く必要ないって?
そんなアナタにこそ、必要な一冊かもしれませんよ。
ショパン ピアノ協奏曲第1番 [音楽]
ショパン:ピアノ協奏曲第1番&ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲
- アーティスト: ルイサダ(ジャン=マルク), ターリヒ四重奏団, ベルリオーズ(ベンジャミン), ショパン, ドヴォルザーク
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 1999/02/03
- メディア: CD
ショパンのピアノ協奏曲第1番。
革命を求める声が高まりつつあったワルシャワを離れる決意をしたショパンが告別演奏会で披露したコンチェルト。
ショパンのポーランドでの青春時代を締めくくる傑作です。
今回紹介するのは、ジャン=マルク・ルイサダのピアノ、ターリッヒ四重奏団&ベンジャミン・ベルリオーズの一枚。
そう、協奏曲の室内楽版(ピアノ六重奏)なんですね。
当然、オーケストラに比べて音の数は少なくなるわけなんですが、その分ストレートにショパンの思いが伝わってきます。
祖国を一人で離れる切ない思い、実ることのなかった初恋 ―
ショパンの曲はいつだってドラマ。
ドラマを盛り上げるのは、ターリッヒ四重奏団&ベンジャミン・ベルリオーズ。
伸びやかなアンサンブルが見事で、切ない旋律も癒し効果大。アルファ波たっぷりです。
もちろん、主役のルイサダも素晴らしい。
美しいピアノの音に乗せて情感たっぷりにショパンの思いを歌い上げています。
のすけの母さん、coco さんにもお墨付きを頂いた一枚。
レコード屋さんで見つけたら、安心してレジまで持っていってもらっていいですよ。
【気分はポイント2倍♪度】 ★★★
Voyage [音楽]
アン・サリーの『ヴォヤージュ』です。
和み系ヴォイスのアン・サリー。
“NHKハート展”のテーマ曲になった<のびろのびろだいすきな木>が『みんなのうた』(NHK)の7月のうたになっているので、知らず知らずのうちに彼女の声を耳にしていた、なんて方もいるかもしれませんね。
今回紹介するのは彼女のデビュー・アルバム。
1曲目の<小舟>からリラックス・モード全開。
夏のポルトガル語って、どうしてこんなに心地よいのかな。
センスの良いバックに支えられて、ジョニ・ミッチェルの<青春の光と影>、チャップリンの<スマイル>、ヘンリー・マンシーニの<酒とバラの日々>他、一度は耳にしたことがあるような名曲をアン・サリー流に料理。あっさり味に仕上げているので耳にもたれるといったことはないでしょう。
これからの季節にCDかければ、あら不思議!気分はすっかり28℃。
ドライブの、読書の、ゴロゴロ昼寝の、お伴にいかが?
何気ない日常をまあるく演出してくれますよ。
【地球にもココロにもやさしい度】 ★★★
COME AWAY WITH ME [音楽]
ノラ・ジョーンズの『COME AWAY WITH ME』です。(歌声を聞きながら、どうぞ)
このブログで取り上げるアルバムにしては、ちょっと雰囲気違う?
ま、レーベルは BLUE NOTE だからいいでしょう。
実際、日本でいち早く“ノラ・ジョーンズ”という名を心に刻んだのはジャズ・ファンだったんじゃないかな。レコード屋さんのジャズのコーナーで日本盤が発売される前に輸入盤が話題になっていたのを思い出します。
その後の活躍ぶりは、ご存じの通り。
2003年の第45回グラミー賞を総なめにして、全世界で2000万枚以上売れて、全米で143週連続第1位を獲得して・・・なんて数字を並べられてもピンときませんね。
テレビのドラマでも主題曲として使われていたので、その歌声を耳にした方も多いはず。
最新アルバムのCMも最近流れています。
なんと言っても、声が魅力的。
深みのある声は、どこか浮遊感もあって、静かに聴く者の心に染み込みます。
発売されたのが春だったこともあって、この季節にノラの歌声を聴くとあの頃の匂いまでをも思い出して、ちょっぴりセンチメンタルになっちゃったりして・・・。
きっと、聴いた人の分だけストーリーがあるんでしょう。
そんなアルバムです。
まだノラを聴いたことがないというあなた、そんなあなたはラッキーな人なのかもしれません。
あなたには感動的な出会いが、まだ残されているのですから。
【春の夜はセンチメンタル度】 ★★★