ブラームス 交響曲第2番 [音楽]
- アーティスト: ジュリーニ(カルロ・マリア), ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団, ブラームス, シューマン
- 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
- 発売日: 2005/09/07
- メディア: CD
ブラームスの交響曲第2番。
第1番の完成に21年もの歳月を費やしたブラームスが、わずか4ヵ月で完成させた交響曲。
ブラームスの“田園交響曲”と呼ばれるように、暗いイメージのあるブラームスの交響曲の中にあって、明るくくつろだ雰囲気が印象的な曲です。
きっと、長いこと苦労していた第1番が完成して、心も晴れやかになったんでしょう。
ブラームスがその最晩年に自身の創作を回想し、自分が書いた最も美しい音楽はこの第2番の第2楽章だった、と言ったとも伝えられています。
ブラームスからクララへ贈った音楽という名のラヴ・レター。
その想いは、時を経た今でも聴く者の心に響きます。
選んだのは、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団の一枚。
カンタービレの指揮者、ジュリーニ。
「カンタービレ」という言葉を聞いて、まず思い出す指揮者といえばジュリーニ、という方も多いのではないでしょうか。
このアルバムでも歌心たっぷりのブラームスを披露。
CDプレイヤーのスタート・ボタンを押して1分55秒もすれば、ジュリーニの音楽が愛されている理由が理解できることでしょう。
ジュリーニは後年ウィーン・フィルともブラームスを録音しており、そちらも名盤ですが、個人的にはこちらのロス・フィル盤に軍配を上げたいところ。
ひきしまった弦の温かく伸びやかな音、ふくよかな木管の音が素晴らしいです。
アメリカ西海岸にこんな素晴らしいオーケストラがあったとは。
ジュリーニの見事な手腕に脱帽ですね。
まばゆい新緑の季節の到来を思い起こさせる交響曲。
桜の季節にも、けっこう合いますよ。
【1番、2番、次は・・・な気分度】 ★★★
ヴォーン・ウィリアムズ あげひばり [音楽]
Elgar: Violin Concerto; Vaughan Williams: The Lark Ascending
- アーティスト: Edward Elgar, Ralph Vaughan Williams, Sir Colin Davis, London Symphony Orchestra, Hilary Hahn
- 出版社/メーカー: Deutsche Grammophon
- 発売日: 2004/09/28
- メディア: CD
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズの<あげひばり>です。
原題の<The Lark Ascending>の方が分かりやすいかもしれませんね。
春らしい曲として daland さんが紹介されていたので、今回乗っかっちゃいました。
先日行われていた世界フィギュアスケート選手権で、韓国のキム・ヨナ選手がフリー・プログラムの曲に採用していたので、ご存じの方も多いでしょう。
繊細な雰囲気を持つ彼女の演技にぴったりな美しい曲です。
イギリスの作曲家、ヴォーン・ウィリアムズがジョージ・メレディスの詩にインスパイアされて作った曲で、スコアの冒頭にその詩を載せているそうです。
彼は舞い上がり旋回を始め
銀色の音の鎖を落とす
その環は切れ目なく続く
さえずり、笛を吹き、伸ばしたり、震わせたりして
天が満ちるまで歌う
彼が伝えるのは地上の愛
まだ続きがあるのですが、素敵な詩ですね。
キム・ヨナさんもこの詩を読んだのかしらん。
紹介するのは、ヒラリー・ハーンのヴァイオリン、サー・コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団の一枚。
期待のヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーン。
派手ではないけれど、艶やかな音色にはため息が出るほど。
やわらかくって、品があって。
作品の世界と相俟って、映像が美しいショート・フィルムを見ているかのよう。
17歳でCDデビューした彼女も発表される作品を聴く限り、着実に成長しているようですね。
将来が楽しみなヴァイオリニストの一人です。
穏やかな春の午後にぴったりな一曲。
春は短いから、今のうちに楽しみたいですね。
【トリプル・アクセル気分度】 ★★★
ふつうがえらい [本]
佐野洋子さんの『ふつうがえらい』です。
もう、題名からしてナイスですね。
『100万回生きたねこ』で有名な佐野さんのエッセイ集。
家族の話、本の話、恋の話、学生時代の話、シュークリームの正しい食べ方・・・佐野さんの本音炸裂に思わず笑いがこぼれます。
「ハハハ!」でなくて、「ふふふ・・・」というタイプ。
でも、その「ふふふ・・・」が最後まで続くんですね。
もちろん、しみじみだってさせてくれます。
濃ゆい人生を歩んできた佐野さんのパワーに圧倒されること間違いなし!
『100万回生きたねこ』を描いた人は、こういう人だったのですねぇ。
納得。
『100万回生きたねこ』で涙した方、今度はこのエッセイで笑ってみてはいかが?
見た目がボンヤリしてても、恋の駆け引きが上手くなくても、頭の回転が各駅停車でも、シュークリーム食べるたびに口のまわりにクリームつけちゃっても・・・すべて愛しい気にさせてくれます。
それが私という人間なんだから。
(あ、でも努力はしないとね♪)
読むたびにちょっぴり元気になれるこの一冊、きっと愛読書になりますよ。
ブラームス 交響曲第1番 [音楽]
第10交響曲こと、ブラームスの交響曲第1番。
以前、このブログでもヴァント盤を紹介したのですが、もう一枚。
- アーティスト: Johannes Brahms, Carl Maria von Weber, Bernard Haitink, Staatskapelle Dresden
- 出版社/メーカー: Querstand
- メディア: CD
ベルナルト・ハイティンク指揮、ドレスデン・シュターツカペレの一枚。
STAATSKAPELLE DRESDEN LIVE シリーズの第1弾。
ドレスデン・シュターツカペレの超強力ライヴ盤です。
芳醇なドレスデン・サウンド。
“いぶし銀の響き”などと呼ばれるドレスデン・シュターツカペレの音ですが、ここで聴くことのできる音は“いぶし銀”という言葉からイメージされるものとは違います。
エネルギーが凝縮された音は、聴き手に届く寸前で爆発。
鼓膜によって捉えられた振動は、脳に伝わるまでに感動と興奮をもたらす物質へと変化します。
推進力を持つハイティンクのタクトから現れる生命力溢れるブラームス。
指揮者とオケが一体となった一夜のマジックを体験することができるでしょう。
録音も最高のこのアルバム、聴き終えたとき、きっと当分交響曲第1番を探す旅はしなくて済むと感じますよ。
ただ、ひとつだけ文句をつけるとすれば、拍手が録音されている時間があまりに短いこと。
きっと“鳴り止まない拍手”があったはずだから。
【ひとり拍手続行度】 ★★★
モーツァルト ピアノ協奏曲第12番 [音楽]
Mozart: Piano Concertos K414 & K453
- アーティスト: Wolfgang Amadeus Mozart, Sir Charles Mackerras, Scottish Chamber Orchestra, Alfred Brendel
- 出版社/メーカー: Philips
- 発売日: 2006/05/09
- メディア: CD
モーツァルトのピアノ協奏曲第12番です。
「じゃあ、モーツァルトのコンチェルトって何?」という声が聞こえて・・・来ないかもしれませんが(笑)、この際なので取り上げてみることにしました。
モーツァルトのピアノ協奏曲といえば、第20番以降がスペシャルなのですが、そこはやはり天才モーツァルト。第19番以前の作品も美旋律の宝庫です。
この第12番もモーツァルトの魅力の詰まった作品で、第19番以前の作品の中でも演奏機会の多いものの一つ。
なんと言っても、第2楽章。
シンプルで美しい旋律 ―
優美さの中に儚さを感じさせる音の調べにずっと浸っていたくなります。
今回選んだのは、アルフレッド・ブレンデルのピアノ、サー・チャールズ・マッケラス指揮 スコットランド室内管弦楽団の一枚。
ブレンデルは、このモーツァルトでも誠実なピアノを披露。
マッケラスとスコットランド室内管弦楽団のサポートも甘くなることはなく、清々しくて好印象です。
春風に舞う桜の花びらを眺めながら、聴けたりしたら最高ですね。
【卒業式気分度】 ★★★
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番 [音楽]
- アーティスト: ブレンデル(アルフレッド), ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団, ハイティンク(ベルナルト), ベートーヴェン
- 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
- 発売日: 2005/06/22
- メディア: CD
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲といえば、第5番≪皇帝≫が有名で、その分野の大横綱なんですが、この4番も詩的で優美な楽想を持つ傑作です。
第5番がきらめく光ならば、第4番はやわらかな風 ―
第1楽章は、ピアノの独奏によるシンプルな旋律で始まるんですが、もうこれを聴いただけでロマンティックでやさしい気持ちになりますね。
ベートーヴェンが恋をしていたときに作曲されたせいかしらん。
今回紹介するのは、アルフレッド・ブレンデルのピアノ、ベルナルト・ハイティンク指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の一枚。
ブレンデルのピアノは、まさに王道。
例えるならば、ハラハラドキドキする恋より、安心感に包まれた愛という感じのピアノ。(かえって分かりにくい?)
品行方正な美しいピアノで、ベートーヴェンの想いを歌っています。
ブレンデルのピアノを聴くとき、見えてくるのは作曲者の顔だけ。
演奏者の顔が目立つようなことはありません。
ハイティンクの伸びやかなサポートも見事です。
春らしいコンチェルトをお探しの方、モーツァルトだけじゃありませんよ。
【何か始まりそうな予感度】 ★★★
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 [音楽]
- アーティスト: アルゲリッチ(マルタ), ベルリン放送交響楽団, シャイー(リッカルド), ラフマニノフ, バイエルン放送交響楽団, キリル・コンドラシン, チャイコフスキー
- 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
- 発売日: 2005/06/22
- メディア: CD
ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。
ラフマニノフのピアノ協奏曲といえば、第2番が最も有名で(『のだめ カンタービレ』にも登場していましたね)、この第3番もロシアの大地を感じさせる名曲です。
ロマン派コンチェルトのひとつの到達点。
映画 『シャイン』で有名になりました。
デヴィッド・ヘルフゴッドが倒れたときに弾いていた、あの曲です。
そう、ぶっ倒れるくらい難しい曲なんですね。
今回選んだのは、マルタ・アルゲリッチのピアノ、リッカルド・シャイー指揮 ベルリン放送交響楽団の一枚。
天才ピアニスト、アルゲリッチ。
“じゃじゃ馬”、“火の玉”、“自由奔放”・・・様々な言葉で形容される彼女のピアノ(人柄?)。
このライヴを聴けば、そんな言葉も納得でしょう。
音がいっぱい詰まったこのヴィルトゥオーゾ・コンチェルトを圧倒的なパワーで弾き切っています。
アルゲリッチの豪快かつ情熱的なピアノにほだされたせいか、オーケストラも熱くドライヴ。
もちろん、聴く側も熱くならざるをえません。
ロシアの広大な大地を思い浮かべていたはずが、いつの間にかアルゼンチンの熱い血が巡る様を思い浮かべてしまいます。
アルゲリッチの腕力は横綱級ですね。
きっと真似をしそこねて腱鞘炎になった音大生も多いことでしょう。
カップリングは、アルゲリッチの十八番の中の十八番、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。
こちらも快演(怪演)。
聴き終えた後、倒れないように気をつけて!
【鍵盤からケムリ度】 ★★★
生かされて。 [本]
イマキュレー・イリバギザさん。
心もからだも輝いて美しいという意味を持つその名のとおりに美しい一人の女性が今回の主人公です。(『CBSドキュメント』 TBS)
1994年に起きたルワンダの大量虐殺。
多数派民族であるフツ族が少数派民族のツチ族を大量虐殺したおぞましい事件。
100日間で100万人以上の命が犠牲になったとも言われています。
それまで良き隣人であり、友人であったはずの人たち。
そんな人たちがある日を境に鉈や槍を手にして殺戮を始めたのです。
それは、まさに“皆殺し”と呼ぶのに相応しいものでした。
最終的には国内にいたツチ族の4分の3が殺されたそうです。
殺戮とレイプという悪夢の嵐が吹き荒れ始めたころ、イマキュレーさんは知り合いのフツ族の牧師に匿われます。
そこは幅90cm、奥行き120cm ほどのベッドルームのトイレ。
整理箪笥の裏に隠された、身動きも出来ないそのスペースで6人の女性が91日間過ごしました(途中で2人が加わり、8人に)。
そんな地獄を生き抜いたイマキュレーさんが書いた本。
『生かされて。』です。(原題 『LEFT TO TELL』)
今まで遠くの国のニュースだった事実。
この本を読み、イマキュレーさんの体験をたどるとき、それが現実に起きた生々しい事実として感じることができるでしょう。
虐殺に怯える日々をどうやって彼女は乗り切ったのか ―
生き残ったとき、どうやって憎しみの連鎖から逃れ、もう一度生き直すことができたのか ―
運が良かったという言葉で片付けるには、あまりにも重い。
悲惨、残酷などという言葉では言い尽くせない内容で、映像を見なくて済むことに感謝したいほどですが、読み終えた後、生きる勇気をもらえたと感じることでしょう。
「きっといつか誰かがこれを読んで、何が起こったのかを知るわ。あなたは、私と同じようにそれを伝えるために生かされたのよ」
まずは、知ることから始めてみてください。
遅すぎるということは、決してないのですから。
(ルワンダで起こったようなことが、今、スーダンのダルフールで起きているそうです。世界はこの現実に対して、どのような答えを用意するのか。早い解決を祈るばかりです)
運命じゃない人 [映画]
映画 『運命じゃない人』です。
カンヌ国際映画祭批評家週間で4つの賞を受賞した内田けんじ監督作品。(こちらも参考に)
運命には扉がつきもの ―
というわけなのか(?)、あるマンションの部屋のドアのくぐった男女5人の運命の物語。
どこまでも人の良いサラリーマン宮田武、その親友で探偵の神田勇介、婚約を破棄し帰る場所を失った桑田真紀、宮田の美人の元カノ倉田あゆみ、あゆみの愛人でヤクザの組長浅井志信。
ある事情がきっかけで巻き起こる一夜の珍騒動。
5人の糸が絡まりあい、ストーリーが展開していきます。
時間軸を行ったり来たりするこの映画、繰り返し観たくなること必至です。
1度目より2度目、2度目より3度目の方が楽しめることでしょう。
緻密なストーリー設定、細かな演出。
内田監督のセンスと手腕に拍手です。
何気ない日常の裏側に神さまのイタズラがあるのだとしたら、こんなものなのかもしれませんね。
「おまえはいまだに人生に期待しちゃっているんだよ。・・・30過ぎたら、もう運命の出会いとか、自然な出会いとか、友だちから始まって徐々に惹かれ合ってラブラブとか、一切ないからな。もうクラス替えとか文化祭とかないんだよ」(神田勇介)
運命の出会いを期待しているアナタ、待っているだけじゃ何も始まらないですよ。
まずは、この映画から始めてみてはいかが?
ベートーヴェン 交響曲第3番 [音楽]
ベートーヴェンの交響曲第3番≪英雄≫です。
ナポレオンに専制からの解放者としての希望を見出したベートーヴェンがナポレオンに捧げるために作曲した交響曲。
しかし、その後、ナポレオンが皇帝に即位したことを知ったベートーヴェンは失望し、「ボナパルト」と書かれた表紙を破り、「シンフォニア・エロイカ ~ある英雄の思い出のために」と書いた・・・なんてエピソードもクラシック・ファンだけじゃなく、『のだめ』ファンにもすっかりお馴染みですね。
ここにベートーヴェンの交響曲の方程式が見事完成した傑作です。
今回選んだのは、ベルナルト・ハイティンク指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の一枚。
しなやかで繊細な音を持つ名器ロイヤル・コンセルトヘボウ。
「弦楽器セクションには贅肉がありません。暖かみがあると同時に、他のオーケストラにはないタッチの軽快さがあります」(ライナーノーツより)
ロイヤル・コンセルトヘボウについて語ったハイティンクの言葉です。
そんなロイヤル・コンセルトヘボウを熟知するハイティンクが速めのテンポでベートーヴェンが思い描いた英雄像を描いていきます。
春のエロイカ。
いわゆるドイツ風の立派なエロイカではありません。
着る物も心も軽くなるこれからの季節、こんな感じのエロイカもいいんじゃないかな。
英雄は、何も立派な男ばかりとは限らないのですから。
【菜ばし気分度】 ★★★